スキップしてメイン コンテンツに移動

ChIP-seqの統計解析のレビュー読んだよ

超並列型短鎖DNAシーケンサーのデータ解析に関する論文を淡々と読んでます。その名もNGS論文100本ノック。普段はEvernote にメモしているのですが、少しずつ公開していきます。

ポリシー



  • 自分が思い出すために必要な情報をメモるだけよ
  • 知ってることはあまりメモしないよ
  • 必要な論文だけ読むよ (ChIP-seq, RNA-seq を中心に)


つまり人に読ませるつもりで書いてません、ごめんね。

今回の論文


1. Ghosh, D. (2010). Statistical Issues in the Analysis of ChIP-Seq and RNA-Seq Data. Genes.

サマリ


112報の論文を参考にシーケンスプラットフォーム概要から mapping, ChIP-seq, RNA-seq の統計処理までをレビューした総説。シーケンスの実験クオリティの評価方法については議論されていない。話もざっくりなのでさらっと読める。RNA-seq の部分は流し読み。

Mapping について


マッピングには大別すると hash table と BWT ベースの方法の2つ。前者の hash table と検索速度のトレードオフがある。後者の suffix array を BWT で作ってインデックスをはる。mapping の良さは mappability score で評価する。Mappability score については以下の論文を参照。

Li, H., Ruan, J., & Durbin, R. (2008). Mapping short DNA sequencing reads and calling variants using mapping quality scores Genome research, 18(11), 1851-1858. doi:10.1101/gr.078212.108

Mapping tool については以下の論文を読めばいよいらしい。
Li, H., & Homer, N. (2010). A survey of sequence alignment algorithms for next-generation sequencing Briefings in bioinformatics, 11(5), 473-483. doi:10.1093/bib/bbq015

ChIP_seq peak calling


ChIP-seqの peak calling のアルゴリズム大別して3つ。タグカウントの移動平均をベースとした方法 (F-seq, QuEST)、確率モデルを使う方法 (CisGenome, BayesPeak)、より複雑な方法(HMMなど)。

F-seq アルゴリズムの説明が微妙なので元論文を読む。ようはタグカウントの分布をカーネル密度推定(Univariate kernel density estimation)する方法で、カーネルには Gaussian kernel を使っている。

2. Boyle, A. P., Guinney, J., Crawford, G. E., & Furey, T. S. (2008). F-Seq: a feature density estimator for high-throughput sequence tags Bioinformatics (Oxford, England), 24(21), 2537-2538. doi:10.1093/bioinformatics/btn480

確率モデルを使う方法では、確率分布には Gamma-Poisson distribution (いわゆる negative binomial distribution) を使う。MACSのなかのひとが poisson distribution のパラメータ λがデータと合わないと言いだして、peak ごとにローカルなλを仮定した。まあだったらλを非負の確率変数と考えて Gamma-Poisson distribution を使えばよいわけで、これを始めたのが CisGenome, BayesPeak の2つとか。Peak calling の今後の課題としては mappability score を考慮した peak calling, FDRの計算手法の改善などがある。

Peak calling アルゴリズムの比較
Laajala, T. D., Raghav, S., Tuomela, S., Lahesmaa, R., Aittokallio, T., & Elo, L. L. (2009). A practical comparison of methods for detecting transcription factor binding sites in ChIP-seq experiments BMC genomics, 10, 618. doi:10.1186/1471-2164-10-618

Wilbanks, E. G., & Facciotti, M. T. (2010). Evaluation of algorithm performance in ChIP-seq peak detection PloS one, 5(7), e11471. doi:10.1371/journal.pone.0011471

Peak calling 後の解析


その後の解析について。binding site と遺伝子アノテーションの統合、TFBS (Transcription Factor Binding Site) の予測、いわゆるDNAモチーフ解析がある。(もうひとつ重要なことがあると思うけど書いてないね)。

Annotation Tool


Shin, H., Liu, T., Manrai, A. K., & Liu, X. S. (2009). CEAS: cis-regulatory element annotation system Bioinformatics (Oxford, England), 25(19), 2605-2606. doi:10.1093/bioinformatics/btp479

Blahnik, K. R., Dou, L., O'Geen, H., McPhillips, T., Xu, X., Cao, A. R., Iyengar, S., et al. (2010). Sole-Search: an integrated analysis program for peak detection and functional annotation using ChIP-seq data Nucleic acids research, 38(3), e13. doi:10.1093/nar/gkp1012

Salmon-Divon, M., Dvinge, H., Tammoja, K., & Bertone, P. (2010). PeakAnalyzer: genome-wide annotation of chromatin binding and modification loci BMC bioinformatics, 11, 415. doi:10.1186/1471-2105-11-415

レビューには出てこないけどこれもある。
Zhu, L. J., Gazin, C., Lawson, N. D., Pages, H., Lin, S. M., Lapointe, D. S., & Green, M. R. (2010). ChIPpeakAnno: a Bioconductor package to annotate ChIP-seq and ChIP-chip data BMC bioinformatics, 11, 237. doi:10.1186/1471-2105-11-237

TFBSの解析は de novo motif 解析と既知の motif 配列の enrichment をみる解析の2通りがある。前者はこれを読んでおけばだいたいOK

Tompa, M., Li, N., Bailey, T. L., Church, G. M., De Moor, B., Eskin, E., Favorov, A. V., et al. (2005). Assessing computational tools for the discovery of transcription factor binding sites Nature biotechnology, 23(1), 137-144. doi:10.1038/nbt1053

ただ古いレビューなので、ChIP-seq のために高速化されたり新しい手法を実装したツールも紹介されている。

Hu, M., Yu, J., Taylor, J. M. G., Chinnaiyan, A. M., & Qin, Z. S. (2010). On the detection and refinement of transcription factor binding sites using ChIP-Seq data Nucleic acids research, 38(7), 2154-2167. doi:10.1093/nar/gkp1180

レビューには登場しないがこれもそうか。

Sharov, A. A., & Ko, M. S. H. (2009). Exhaustive search for over-represented DNA sequence motifs with CisFinder DNA research : an international journal for rapid publication of reports on genes and genomes, 16(5), 261-273. doi:10.1093/dnares/dsp014

残り98報。つづく。

コメント

このブログの人気の投稿

シーケンスアダプタ配列除去ツールまとめ

FASTQ/A file からシーケンスアダプター配列やプライマー配列を除くためのプログラムをまとめてみる。 まず、配列の除去には大別して2つの方向性がある。ひとつは、アダプター配列を含む「リード」を除いてしまう方法。もうひとつは除きたい配列をリードからトリムする方法である。後者のほうが有効リードが増えるメリットが、綺麗に除ききれない場合は、ゲノムへのマップ率が下がる。 気をつける点としては、アダプター/プライマーの reverse complement を検索するかどうか。paired end の際には大事になる。クオリティでトリムできるものや、Paired-end を考慮するものなどもある。アダプター/プライマー配列の文字列を引数として直接入力するものと、multi fasta 形式で指定できるももある。 From Evernote: シーケンスアダプタ配列除去ツールまとめ TagDust http://genome.gsc.riken.jp/osc/english/software/src/nexalign-1.3.5.tgz http://bioinformatics.oxfordjournals.org/content/25/21/2839.full インストール: curl -O http://genome.gsc.riken.jp/osc/english/software/src/tagdust.tgztar zxvf tagdust.tgz cd tagdust/ make sudo make install rehash 使いかた: tagdust adapter.fasta input.fastq -fdr 0.05 -o output.clean.fastq -a output.artifactual.fastq 解説: 入出力形式は fastq/a が使える。リード全体を除く。速い。アダプター配列を fasta 形式で入力できるのが地味に便利で、これに対応しているものがなかなかない。Muth–Manber algorithm (Approximate multiple

DNAを増幅するサーマルサイクラーを自作してみたよ

DNAをPCR法で増幅するために必要なサーマルサイクラーを自作してみました。自作と言っても、いわゆる、PCの自作と同じでパーツを組み立てていく感じです。購入から組み立ての様子を簡単に紹介します。 モチベーション ラボには様々なレクリエーションがあります。例えば、単にどこかに遊びに行ったり、スポーツ大会したり、ひたすら合宿形式でプログレスのプレゼンをするミーティングするなどがあります。それもよいのですが、せっかくなので、普段の研究時間ではトライできないが、研究に関わる hack を行う、というイベントを企画してみました。夏休みの自由研究や社会科見学的なノリです。   うちのラボでは、PCRを使ったウェットの実験技術の開発をしてきました。しかし、サーマルサイクラーのハードウェアの仕組みを体験的に理解している訳ではありません。そこで、サーマルサイクラーを作ってみました。   欧米で始まっている、自宅のガレージやキッチンでバイオロジーを行うムーブメント、バイオパンク、DIYbio を体験しておきたいというのもありますし、Arduino などオープンハードウェア、Maker のムーブメントを体験するのも目的の一つです。ハードウェア開発が思っているほどハードルが下っていることを体験できて、かつ、将来、ウェットの開発だけでなく、装置開発などもできたら、ラッキー、ぐらいの気持ちでやってみました。   購入 今回作ったのは、組み立て式で、かつ、仕様などや設計図が公開されているOpenPCRというサーマルサイクラーです。ハードウェアの仕様・設計図、制御ソフトウェアなどの情報がすべて公開されており、部品からも自作することが可能です。今回は、「設計図から部品や回路のパーツを作り、それらを組み立てる直前のもの」を購入しました。   ChaiBio https://www.chaibio.com/   OpenPCR https://www.chaibio.com/products/openpcr   なぜか http://openpcr.org/  で購入できなかったので、eBay にある ChaiBio で買いました。   OpenPCR - eBay http://www.ebay.com/itm/111096418574   本体価格は

大学の研究室でアカデミックプランが使えるICTツール

自分らでサーバ管理したくないので、SaaS系とローカルで動くソフトのみ。ローカルで動くソフトに関しては、Mac or Docker で動くもののみ。 無償 G Suite for Education  (ドキュメント共有、カレンダーなど) GitHub Education  (ソースコード管理) esa.io アカデミックプラン  (知識共有) Tableau  (データ可視化) Scrapbox  (知識共有) GROWI.cloud  (Wikiなど) 割引 Slack の教育支援プログラム  (ビジネスチャット) Dropbox Education  (ファイル共有、ドキュメント共有) Office 356  (オフィスソフト) Adobe Creative Cloud  (画像編集) AutoDesk for Education  (CADなど) これから申し込んでいくところなので、本当に使えるかはわかりせん。使えた使えないなどの情報やほかのツールでお勧めがあれば教えてもらえると嬉しいです。 アカデミアでなくても無料で使えるツールのうち、うちで使うであろうものは以下に列挙していく。 Google Colaboratory  (データ解析) Overleaf  (論文執筆) Rstudio  (開発, データ解析) VS code (開発)