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もうひとつの Nikaido Lab. が始動します

ろくに更新していないこのブログで公表するものどうかと思いましたが、SNS以外で個人の立場として近況を書けるところはここだけなので、ここに書きます。

2020年4月1日より、国立大学法人 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 ゲノム応用医学部門 ゲノム機能情報分野の教授職を拝命致しました。東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 修士課程 医歯理工保健学専攻/博士課程 生命理工医療科学専攻 ゲノム機能情報の教授も兼務し、教育にも従事します。理研のラボも残しつつ2組織3拠点体制で研究、それに教育に励んでいきます。

両方で研究をすることを許して頂いた理研と大学の関係各位に深く御礼を申し上げます。またPI不在が多くなるにも関わらず、いろいろと工夫してラボ運営や研究に参加してくれている理研のメンバーにも大変感謝しています。また事前にお知らせしたかった方々も大勢おりましたが、ばたばたしており直接お話できずに申し訳ありません。

ゲノム分野の新しいバイオインフォマティクス技術は、ゲノム科学の新しい計測技術の側に現れます。その理由は新しいデータには新しいデータ科学の課題があるからです。そのデータの側にいればまっさきにアクセスできオリジナリティを発揮しやすくなります。しかし、それだけではありません。そもそも、データをどのように出すべきなのか、あるいは、データ解析技術を前提すれば新しい計測技術が作れないか(計算と計測の融合)、という1歩、2歩と踏み込んだバイオインフォマティクスとゲノム科学の関係が最先端の研究現場にはあります。このようにして生み出された技術は、新しい生命現象を観測し解き明かし、やがては疾患の理解や制御、診断に役に立つでしょう。

理研ではこのような立場から新しい1細胞RNA-seq法とそのデータ解析技術を開発し、社会実装もしてきました。これは異なるタレントの研究者が揃って共同し生み出せたものです。しかし、アイディアの量に対して人材は常に少ない状況です。また大きなプロジェクト(と家庭と任期)を抱えている研究員では、なかなか気軽にいろいろなことを試すのが難しい状況もあります。このような背景から、研究速度や規模が圧倒的に速くなっているゲノム科学やそのバイオインフォマティクス研究で、国際的な存在感を出すことが難しくなっています。

ここ数年は、このような研究に興味を持ち参加してくれる人を待ち、時には啓発しきましたが、その一方、自分達で若く柔軟で身軽な学生さんを研究現場で育成するのがよいのではないかと感じるようになってきました。そんな折りに今回のポストに採用して頂きました。

国立大学法人 東京医科歯科大学は、Tier1の国立医大で優秀な研究者や学生、臨床医が集まっています。難治疾患研究所は1973年から続く伝統のある研究所で、治療や予防が難しい疾患を対象に様々な分野の基礎研究者が集まり、研究を行う大学附属研究所です。また臨床の部局とともに難治性疾患の克服も目指しています。もちろん、研究を担う人材の育成も行っています。我々もより臨床に近い場所で、我々の技術をどのように活かすのか、どのような技術が必要なのかを念頭に置きながら研究教育に邁進したいと考えています。

大学のラボのウェブサイトも作ってみました。研究内容の概要や研究に参加したい方はどうぞご覧ください。
https://nikaidolab.org/

ちなみに最近の理研のラボの状況はこんな感じです。ご無沙汰の方は以下もご覧ください。
https://bit.riken.jp/

では最後に定番の謎のURLを張っておきます。大人のみなさまは上のURLより下のURLをクリックしましょう。
https://www.amazon.co.jp/hz/wishlist/ls/22I8BVBTWDOUQ?type=wishlist&filter=unpurchased&sort=price-asc&viewType=list

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