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DNAを増幅するサーマルサイクラーを自作してみたよ

DNAをPCR法で増幅するために必要なサーマルサイクラーを自作してみました。自作と言っても、いわゆる、PCの自作と同じでパーツを組み立てていく感じです。購入から組み立ての様子を簡単に紹介します。

モチベーション
ラボには様々なレクリエーションがあります。例えば、単にどこかに遊びに行ったり、スポーツ大会したり、ひたすら合宿形式でプログレスのプレゼンをするミーティングするなどがあります。それもよいのですが、せっかくなので、普段の研究時間ではトライできないが、研究に関わる hack を行う、というイベントを企画してみました。夏休みの自由研究や社会科見学的なノリです。
 
うちのラボでは、PCRを使ったウェットの実験技術の開発をしてきました。しかし、サーマルサイクラーのハードウェアの仕組みを体験的に理解している訳ではありません。そこで、サーマルサイクラーを作ってみました。
 
欧米で始まっている、自宅のガレージやキッチンでバイオロジーを行うムーブメント、バイオパンク、DIYbio を体験しておきたいというのもありますし、Arduino などオープンハードウェア、Maker のムーブメントを体験するのも目的の一つです。ハードウェア開発が思っているほどハードルが下っていることを体験できて、かつ、将来、ウェットの開発だけでなく、装置開発などもできたら、ラッキー、ぐらいの気持ちでやってみました。
 
購入
今回作ったのは、組み立て式で、かつ、仕様などや設計図が公開されているOpenPCRというサーマルサイクラーです。ハードウェアの仕様・設計図、制御ソフトウェアなどの情報がすべて公開されており、部品からも自作することが可能です。今回は、「設計図から部品や回路のパーツを作り、それらを組み立てる直前のもの」を購入しました。
 
ChaiBio
 
OpenPCR
 
なぜか http://openpcr.org/ で購入できなかったので、eBay にある ChaiBio で買いました。
 
OpenPCR - eBay
 
本体価格は $599 で、送料が $76.05 で、輸入費用が $41.55 でした。合計 $716.6 だったので、日本円で、7万円ぐらいです。サーマルサイクラとしては安いですね。数クリックで購入、PayPalで支払いと非常に簡単でした。約1週間で届きました。
 
組み立て
さっそく組み立てます。今回はラボの3人の研究者で1台を組み立てました。僕はバイオインフォですがハードウェアについては詳しくはないです。ほかの2人はウェットの生物学者。
 
こんな感じのダンボールで届きました。 

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中身はこんな感じ。自作PCで良く使うCPU用クーラーがごろっと入っていました。ほかにマニュアルや Arduino などが入っています。ペルチェ素子も。外枠は明らかに木ですね。

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マニュアルに従いまずは蓋を組み立てます。写真はPCRをベースとした1細胞RNA-Seq法: Quartz-Seq を作った笹川上級研究員です。

Quartz-Seq: a highly reproducible and sensitive single-cell RNA sequencing method, reveals non-genetic gene-expression heterogeneity

ウェット研究者がハードウェア組み立てに挑戦。楽しそうです。

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サーマルサイクラは蓋を高温にして、チューブの液体が蒸発しないように温度をコントロールするそうです。そのためのヒーターを仕込みます。なんと OpenPCRは蓋の温度も設定できる。売りものでも古いものや安いものだとこれができなかったりするみたい。

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蓋にヒーターを固定します。

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次にチューブに温度をかける部分を作ります。CPUクーラーとチューブホルダーを固定するための台を作ります。

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台にペルチェを固定し、その上に、チューブラックを配置します。

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サーマルサイクラーの心臓部分があっさり完成。こんなんでいいのか。。。
次は Arduino にサーマルサイクラーをコントロールする基盤を固定し、木枠に固定します。温度などが表示される液晶画面も設置します。 

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これで、蓋とチューブホルダー部分が完成です。あとはケーブルをうまく箱に入れていきます。箱には電源ユニット (これも自作PCで使われているものです) を配置します。
 
素子に繋がっている温度センサーのケーブルがとても細く、切断してしまいそうになります。ここは最新の注意が必要です。またクーラーの排熱を邪魔しないよう、ケーブルを綺麗に配置するのが温度制御の速さなどに関わるので、慎重に綺麗に配置しましょう。

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これでサーマルサイクラーの完成です。

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PCにAIRで実装された制御ソフトをインストールして、USBで接続します。ここで温度やサイクル数などを設定し、Run するだけ。コードはgithubで公開されています。

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温度が表示されています。Lid が 69度まで上っています。ほのかに木のよい香りがしますw

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ScanSnapと並べてデスクに置いてみた。

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まとめ
非常に簡単。液体を温度制御するには、要は、チューブホルダーを作って、ペルチェ付けて、空冷でも温度下げるという仕組みをプログラム制御するだけ、ということが体験できました。3人で4時間ぐらいかかりました。
 
できあがったものも、普段、市販の最新のサーマルサイクラーで実験しているラボメンが、温度制御の速さなど、遜色ないかも、ということを言っていました。実際に実験してみなければ、わからないですが。ラボメン達とは、試しに、これで次世代シーケンサーのライブラリプレップでもやってみようかという話をしています。
 
ハードウェアが気軽に購入・自作できるとしても、酵素やバッファーなど試薬類はどうするの? という疑問があるかと思います。これに関しても、OpenBiotechnology というサイトで購入できるようになっています。
 
Open Biotechnology
 
これを体験することで、ハードウェアを知ることに対する抵抗感がかなり払拭されました。作り終わった後は、ウェットの研究者が、SBSフォーマットのマルチウェルプレートやスライドガラスサイズに改造するために、ペルチェ素子の値段を調べ始めたりしてました。OpenPCRから、qPCR機器も発売されるそうなので、こちらが出たらまたトライしてみたいと思います。また、バイオテクノロジーの民主化についていろいろと思うことが出てきました。こちらに関しては以下の書籍が詳しいです。
 
バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック! [単行本(ソフトカバー)] マーカス・ウォールセン (著), 矢野 真千子 (翻訳)
 
ラボのレクとしては、次回以降 qPCR マシンの作製や、3Dプリンタ・スキャナの体験、マイクロ流路の作製体験、Google Glass体験などをやってみたいですね。

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2013年4月に独立して7年目が終わろうとしている。ざっくりこれまでの研究を振り返る。 2013年から2017年の4年はフルスタックのゲノム科学、ゲノムインフォのラボを立ち上げることに集中していた。しかも人様が作った技術のユーザとして研究するのではなく、新しい技術を開発できるラボを目指した。ウェットの開発については、ドライのPIであっても本物を創りたいと考えたので世界最強や唯一の技術を目指した。特に1細胞ゲノム科学に注力した。そのためにまずグラントを取り仲間を集め技術を作った。幸いウェットは元同僚を中心に、ドライはドクター新卒の優秀な人材に囲まれた。並行して開発した実験やデータ解析技術を応用するため、データ生産や共同研究を支えるチームも作った。 2015年ぐらいからドライの論文が少しずつ出始め、2018年にはウェットのフラッグシップとなる技術RamDA-seqとQuartz-Seq2の2つ出版された。2021年1月現在、これらはそれぞれ世界唯一と世界最高性能の2冠である。これが達成できた大きな理由のひとつは、反応原理を徹底的に理解し制御するというチームやそのメンバーの特性にある。ここは世界最高レベルだと確信している。 2017-2018年はラボの移転がありウェットの開発や実験が大きく停滞した。その間ドライのチームががんばってくれて2019-2020年にはドライ研究の収穫の時期がきた。またRamDA-seqの試薬キット化・装置化、Quartz-Seq2とそのデータ解析技術での起業、実験試薬や道具の上市など社会実装の年でもあった。実験が少なくなった分、ウェットのメンバーの解析技術がかなり向上した時期でもある。これはウェットとドライがうまくコミュニケーションできる証拠でもある。 2019-2020年はウェット技術のフラッグシップを駆使した共同研究がいくつか花咲いた。主に「再生医療分野」への応用と「細胞ゆらぎと転写制御の謎」に迫る基礎的なテーマが対象で、もともと1細胞ゲノム科学を始めたときに目標としたものだった。 並行してゲノムデータの科学計算環境のインフラ開発に注力してきた。beowulf型PCクラスタからクラウドの移行やハイブリッド化、DevOpsによる自動構築、ワークフロー言語の導入、動的レポート生成などの導入・開発を行いこれらを日常的に使うラボになった。これらはNI