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SIG-MBIとOpen-bioで発表してきました

以下のふたつの研究会に参加してきました。

第46回 人工知能学会 分子生物情報研究会
第14回 オープンバイオ研究会

前者では定量生物の会や分子生物学会年会で話した ChIP-seq 解析の続きを話をしました。細胞特異的な転写因子パートナーの予測が実験でも確かめられたことを話せたので、研究としては(論文が受理されれば)ひとまずこれで一周したかな、と思います。今後は「統計モデルから物理モデルへ」と「予測から設計へ」という2つのキーワードで先を目指したいと考えています。

オープンバイオのほうでは、2003年から始めて2008年から放置ぎみのバイオインフォマティクス向け Linux OS, Knoppix for Bio (KNOB) のこれまでと今後について話しました。Amazon Web Service の EC2 を使ってクラウド化を目指すのが良いのではないか、という内容です。僕のキャラはプロトタイピングとプロディース向きなので、きっちりとメンテをやってくれるキャラのパートナーを絶賛募集中です。

ともかく、オープンバイオ研究会の原点とも言える KGB (KNOB, G-language, BioRuby) がそろって「これまでと今後」について話せたのはある意味マイルストンとしては良いミーティングだったと思います。

名物の夜のディスカッションでは、オミックス解析が「定性的なパイプライン処理」から「定量的なモデルによるデータ統合」へ変化することを予測して、それに耐え得るツール、データベース、セマンティックWeb技術などのが次のオープンバイオの課題である、という話をしました。パイプライン処理の結果を単にID変換(表の結合やベン図)により結合するだけでなく、定量的なモデルにより統合するためには、数値データの扱い、オブジェクト(転写単位やプロモータ領域)の閾値による動的な変化などをうまく扱う必要があります。これらの問題を解決する方法が、今のセマンティックWebやパイプライン管理システムの先にあるのか。数年かけてじっくり考えるべきテーマだと思います。

一方で、現在のバイオ系のセマンティックWeb関連の研究開発の延長に、クイズチャンピオンに勝利できる Watson の愛称で知られている DeepQA に相当する、DeepLSQA (LS = life science) が実現できるのか、という佐藤先生の指摘も非常に興味深いものでした。テキストマイニングのみなさまには、専門家を凌駕する DeepLSQA の構築を目指して欲しいですね。

やはりオープンバイオは僕にとってホームグラウンド。現場で感じることを開発をメインに研究開発している人に伝えること、最新のオープンバイオ関連の知識をえること、KNOBのようなみんなのプラットフォームになるものを提供すること、この3つが自分の役割であることを再確認しました。また研究生活で悩んでいることなども腹を割って共有できる場としても重要な役割を果しているのだと気付きました。それだけでも続ける価値があります。今後も積極的にオーガナイズに関わっていきたいです。

それではみなさまお疲れさまでした!

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