第5回目です。いよいよコードを読んできます。
Rディレクトリにこのパッケージのソースが含まれています。各々のファイルをみてきましょう。
[code]
tree GOstats
GOstats/
|-- DESCRIPTION
|-- NAMESPACE
|-- R
| |-- AllClasses.R
| |-- AllGenerics.R
| |-- GOHyperGResult-accessors.R
| |-- GOgraph.R
| |-- GOhyptest.R
| |-- hyperGTest-methods.R
| |-- hyperGtable.R
| |-- shortestPath.R
| |-- triad.R
| `-- zzz.R
[/code]
まず、すべてのクラス定義は R/AllClasses.R に含めることがわかります。また、すべての総称関数 (Generic function) の定義は、R/AllGenerics.R に含めます。総称関数のコードは、R/メソッド名-methods.R という名前にします。オブジェクトの変数にアクセスする、いわゆる accessor method は R/クラス名-accessors.R に集めます。
これらはこのようにしなければ動作しないというわけではありませんが、BioC ではこのような構造で実装することが推奨されています (Bioconductor パッケージガイドライン: S4 クラスとメソッドを参照)。
GOstats の場合もこの構造に則って実装されていますね。ファイル名をみると、hyperGTest-methods.R と GOHyperGResult-accessors.R があります。ファイル名から、このパッケージは、GOHyperGResult というクラスと、hyperGTest という総称関数を持っていることがわかります。
では、実際にそのクラスどのように定義されているか見てみましょう。
AllClasses.R
[code]
setClass("GOHyperGResult",
contains="HyperGResultBase",
representation=representation(
goDag="graph",
pvalue.order="integer",
conditional="logical"),
prototype=prototype(
testName="GO",
pvalueCutoff=0.01,
goDag=new("graphNEL")))
[/code]
わずかこれだけです。setClass でクラスを定義します。このエントリを読むひとは S4 の知識がありそうなものですが、一応、setClass を簡単に説明しておきます。
representation メソッドはクラスの持つ変数を定義します。この変数を S4 では slot と呼びます。slot 名 = "データ型" のリストが引数になります。S4ではこのようにデータ型を指定し、インスタンスを作成したときに型が違うとエラーを出します。
prototype はインスタンスが作られたときに引数が与えられなかった場合にデフォルトで slot に代入される値を決めています。
contains はスーパークラスを指定します。GOHyperGResult は HyperGResultBase クラスのサブクラスになります。つまり、HyperGResultBase で定義された slot をすべて引き継ぎます。では、HyperGResultBase はどこで定義されているのでしょうか。grep します。
[code]
pwd
/Users/itoshi/Projects/Rpacks-devel
grep HyperGResultBase */R/*
Category/R/AllClasses.R:setClass("HyperGResultBase",
:
:
[/code]
ありました。
Category/R/AllClasses.R
[code]
setClass("HyperGResultBase",
representation(annotation="character",
geneIds="ANY",
testName="character",
pvalueCutoff="numeric",
testDirection="character"),
contains="VIRTUAL",
prototype=prototype(pvalueCutoff=0.01))
[/code]
サブクラスである、HyperGResult は、で定義された slot である、geneIds, testName, pvalueCutoff, testDirection を持つことになります。
HyperGResultBase の contains が VIRTUAL となっています。これは virtual class を定義する方法のひとつです。virtual class はインスタンスを作れないクラスのことです。このことから、HyperGResultBase が直接使われることはなく、subclass を定義して使うためにあること、HyperGResult 以外にも HyperGResultBase 以外のサブクラスがありそうなことが予想がつきます。
[code]
grep HyperGResultBase */R/*.R|grep contains
Category/R/AllClasses.R: contains="HyperGResultBase",
Category/R/AllClasses.R: contains="HyperGResultBase",
GOstats/R/AllClasses.R: contains="HyperGResultBase",
PCpheno/R/AllClasses.R: contains="HyperGResultBase",
eisa/R/AllClasses.R: contains=c("HyperGResultBase", "VIRTUAL"),
[/code]
PCpheno と eisa で使っているようです。
このようにバーチャルクラスとクラスの拡張を使うことで、ほとんど同じであるがわずかに representation が違うクラスを定義しているわけです。
S4クラスや総称関数の定義をどこに置くのかをみました。また S4 でクラスを定義する方法とクラスを継承し拡張する方法を簡単に紹介しました。
次は、メソッドの定義を見ていきましょうかね。
続きます。
第1回: Bioconductor のパッケージについて知る
第2回: Bioconductor のソースコードを得る
第3回: Bioconductor には S4 で書かれたコードがどのぐらいあるのか
第4回: R package の構造
ファイルの配置とS4クラス・メソッドの定義の関係
Rディレクトリにこのパッケージのソースが含まれています。各々のファイルをみてきましょう。
[code]
tree GOstats
GOstats/
|-- DESCRIPTION
|-- NAMESPACE
|-- R
| |-- AllClasses.R
| |-- AllGenerics.R
| |-- GOHyperGResult-accessors.R
| |-- GOgraph.R
| |-- GOhyptest.R
| |-- hyperGTest-methods.R
| |-- hyperGtable.R
| |-- shortestPath.R
| |-- triad.R
| `-- zzz.R
[/code]
まず、すべてのクラス定義は R/AllClasses.R に含めることがわかります。また、すべての総称関数 (Generic function) の定義は、R/AllGenerics.R に含めます。総称関数のコードは、R/メソッド名-methods.R という名前にします。オブジェクトの変数にアクセスする、いわゆる accessor method は R/クラス名-accessors.R に集めます。
これらはこのようにしなければ動作しないというわけではありませんが、BioC ではこのような構造で実装することが推奨されています (Bioconductor パッケージガイドライン: S4 クラスとメソッドを参照)。
GOstats の場合もこの構造に則って実装されていますね。ファイル名をみると、hyperGTest-methods.R と GOHyperGResult-accessors.R があります。ファイル名から、このパッケージは、GOHyperGResult というクラスと、hyperGTest という総称関数を持っていることがわかります。
S4クラスの定義
では、実際にそのクラスどのように定義されているか見てみましょう。
AllClasses.R
[code]
setClass("GOHyperGResult",
contains="HyperGResultBase",
representation=representation(
goDag="graph",
pvalue.order="integer",
conditional="logical"),
prototype=prototype(
testName="GO",
pvalueCutoff=0.01,
goDag=new("graphNEL")))
[/code]
わずかこれだけです。setClass でクラスを定義します。このエントリを読むひとは S4 の知識がありそうなものですが、一応、setClass を簡単に説明しておきます。
representation メソッドはクラスの持つ変数を定義します。この変数を S4 では slot と呼びます。slot 名 = "データ型" のリストが引数になります。S4ではこのようにデータ型を指定し、インスタンスを作成したときに型が違うとエラーを出します。
prototype はインスタンスが作られたときに引数が与えられなかった場合にデフォルトで slot に代入される値を決めています。
S4 クラスの拡張
contains はスーパークラスを指定します。GOHyperGResult は HyperGResultBase クラスのサブクラスになります。つまり、HyperGResultBase で定義された slot をすべて引き継ぎます。では、HyperGResultBase はどこで定義されているのでしょうか。grep します。
[code]
pwd
/Users/itoshi/Projects/Rpacks-devel
grep HyperGResultBase */R/*
Category/R/AllClasses.R:setClass("HyperGResultBase",
:
:
[/code]
ありました。
Category/R/AllClasses.R
[code]
setClass("HyperGResultBase",
representation(annotation="character",
geneIds="ANY",
testName="character",
pvalueCutoff="numeric",
testDirection="character"),
contains="VIRTUAL",
prototype=prototype(pvalueCutoff=0.01))
[/code]
サブクラスである、HyperGResult は、で定義された slot である、geneIds, testName, pvalueCutoff, testDirection を持つことになります。
バーチャルクラス
HyperGResultBase の contains が VIRTUAL となっています。これは virtual class を定義する方法のひとつです。virtual class はインスタンスを作れないクラスのことです。このことから、HyperGResultBase が直接使われることはなく、subclass を定義して使うためにあること、HyperGResult 以外にも HyperGResultBase 以外のサブクラスがありそうなことが予想がつきます。
[code]
grep HyperGResultBase */R/*.R|grep contains
Category/R/AllClasses.R: contains="HyperGResultBase",
Category/R/AllClasses.R: contains="HyperGResultBase",
GOstats/R/AllClasses.R: contains="HyperGResultBase",
PCpheno/R/AllClasses.R: contains="HyperGResultBase",
eisa/R/AllClasses.R: contains=c("HyperGResultBase", "VIRTUAL"),
[/code]
PCpheno と eisa で使っているようです。
このようにバーチャルクラスとクラスの拡張を使うことで、ほとんど同じであるがわずかに representation が違うクラスを定義しているわけです。
まとめ
S4クラスや総称関数の定義をどこに置くのかをみました。また S4 でクラスを定義する方法とクラスを継承し拡張する方法を簡単に紹介しました。
次は、メソッドの定義を見ていきましょうかね。
続きます。
連載の目次
第1回: Bioconductor のパッケージについて知る
第2回: Bioconductor のソースコードを得る
第3回: Bioconductor には S4 で書かれたコードがどのぐらいあるのか
第4回: R package の構造
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